外部サーバの利用を認めないAutodeskの規約
先日、取り上げたGoogleのレンダーファームの記事は、多くの方にご覧いただけました。ありがとうございます!!
そちらでは書いていませんでしたが、クラウドを使ったレンダリングには、実は、Autodeskの規約という大きな壁があります。
CG業界の巨人Autodesk
Autodeskは、CG業界における、Adobeのような存在です。かつて、Adobeは、PhotoshopやIllsutratorなど、写真や印刷の業界向けのソフトが主力でしたが、Web業界向けのソフトを強みにしていたMacromediaを買収し、主要なクリエイティブ系のソフト全般を手中に収めました。
その後のAdobeの強さは、多くの人が知るところだと思います。もはや、クリエイティブ系の業界でAdobeのソフトは欠かせなくなっていますよね。
Autodeskは、CG業界におけるAdobeのような存在と考えてもらうと、わかりやすいです。3DCGソフトは、色々な会社から販売されていますが、中でも、業界標準となっているMaya、3ds Max、SoftImageは、3大ソフトと呼ばれています。
元々、Autodeskは、3ds Maxを持っていましたが、数年前に、MayaとSoftImageの開発会社を買収し、3大ソフトを全て自社のものとしました。この発表は、当時、CG業界では非常に大きなニュースとして、取り上げられました。
競合しているソフトを全て買収して、どう住み分けるのかということは誰もが疑問に感じたところですが、SoftImageは、2014年のリリースが最終になると発表され、無くなることになりました。
かつて、アップルが、Shakeという合成ソフトの開発会社を買収し、数十万円だった価格を、最終的に10万円以下とし、本当に大丈夫なのかと思っていたら、開発終了になったということがあります。
Adobeも、競合するソフトを幾つか淘汰しているし、こういうのは避けられないんでしょうねー
Autodeskの規約ではクラウドへのソフトウェアインストールは禁止されている
Autodesk製品の規約は、次のページで公開されています。
Legal Notices & Trademarks – Software License Agreements
http://usa.autodesk.com/adsk/servlet/index?siteID=123112&id=10235425
上記のページに掲載されている、2015 Platform and Design Suites LSA – Japanese を見ると、禁止事項として、次のような内容が書かれています。
以下、「2.1 禁止事項」からの抜粋です。
(g) 特定のライセンス タイプに関して別段の明示的定めのある場合を除き、ワイド エリア ネットワーク(WAN)、仮想プライベート ネットワーク(VPN)、仮想化、ウェブ ホスティング、タイム シェアリング、サービス ビューロー、サービスとしてのソフトウェア、クラウド サービス、クラウド技術またはその他のサービスもしくは技術に関連しての使用を含め、インターネットその他の非ローカル ネットワークでのオートデスク マテリアルのインストールもしくはアクセスまたはかかるインストールもしくはアクセスを許容するライセンス
クラウドのサーバに、Autodeskのソフトウェアをインストールすることを禁止しているようです。
購入したCGソフトのライセンスを、Amazonのクラウドにインストールして使うことはできないわけですね。
Zync Renderは、この問題をどのように解決したのかが、疑問です。Autodeskの正式な許可を得ているのなら良いのですが…
Zync Renderのクラウドレンダリングは規約上は禁止のはず
従来のレンダーファームサービスを提供する会社は、自社でサーバを構えているところが多いです。
ソフトウェアもレンダーファーム側がライセンスを持っていれば、利用者はデータだけを渡して、レンダーファームはレンダリングだけ代行するのなら、禁止事項には抵触しないものと思われます。
しかし、Zync Renderのクラウドレンダリングは、誰がライセンスを持っていたとしても、クラウドにソフトウェアをインストールすることそのものが禁止されているので、規約どおりに考えるなら、そもそも、成り立っていないはずです。
ちなみに、Zync Renderがサポートしているソフトとプラグインは、次のとおりです。
Supported Software:
- Maya 2012, 2013, 2013.5, and 2014
- Nuke 6 and higher
- V-Ray for Maya (including nightly builds)
- Mental Ray Standalone
- Arnold for Maya (MtoA)
Plug-ins:
- GenArts Sapphire
- Furnace by The Foundry
- Ocula by The Foundry
なんか、Mayaだけは、対応していると明記されているんですよね。Autodeskの合意は得られているのかなー
でも、Googleが本気でレンダーファーム事業に乗り出すなら、利用者の裾野は広がると思われ、Autodeskにとっても悪い話では無いと思うんですけどね。
ここは是非、CG業界の活性化とか発展のために、GoogleとAutodeskには仲良くしてもらって、ユーザーフレンドリーな結論を出してほしいものです。
ちなみに、いわいが愛用しているMODOというソフトは、クラウド使っちゃだめよという縛りは無いので、お気楽です(笑)